★ 遅れてきた4月の馬鹿 ★
<オープニング>

「ねぇねぇ、最近カップルの破局って多くない?」
 カフェで休憩をしていると、常木利奈が注文していた品を出しつつ聞いてくる。
「知らないの? 遅れってる〜。銀幕ジャーナルにだって、載ってるわよ?」
 と、差し出された記事には確かにそんなことがちらほらと。
 もともとゴシップが多いのであてにはならないかもしれないが……。
「信じてないわね、その顔。でも、噂じゃある怪人がかかわってるみたいよ?」
 と、制服のポケットから写真を出す。
 そこには桜色のラメスーツに身を包んだ、スレンダーではあるが筋肉のある男が妙なポーズでうつっていた。
「AprilGuy。略してAGっていう人なの。アメリカのコミックヒーローで、日本でもアニメ映画にされてるわ」
 再び、その写真に目を写す。子供に人気があるのかなぞだ。
「彼が『エイプリルFOOOL!』って叫ぶとほんとが嘘で、嘘がほんとになるそうだから、それが原因かもね〜」
「利奈、サボってないで注文の品できたよ、3番テーブルに運んで!」
「あ、はーい。かかわらないほうがいいかもしれないけど、見かけたら捕まえてほしいな。実は私も告白を邪魔されたから」
 ぐぐっとこぶしを握り、一瞬怒るもすぐに営業スマイルに戻り、利奈はそこからさる。
 ふと、外を見ると誘うようにピンクのラメスーツの男が尻を叩いているのが見えた。

種別名シナリオ 管理番号123
クリエイター橘真斗(wzad3355)
クリエイターコメントまぁ元ネタはなんともいいません。
突っ込みどころいっぱいかもですが、ノーコメントで

被害が増える前に倒しましょう。
告白するときに現れて、邪魔をするのが趣味のようです。
それを囮に誘い出すのもありでしょう。

参加者
ジョニー(cbny7469) ムービースター 男 26歳 ピエロ
神宮寺 剛政(cvbc1342) ムービースター 男 23歳 悪魔の従僕
梛織(czne7359) ムービースター 男 19歳 万事屋
西村(cvny1597) ムービースター 女 25歳 おしまいを告げるひと
ファーマ・シスト(cerh7789) ムービースター 女 16歳 魔法薬師
<ノベル>

〜馬鹿は朝からやってくる〜

 利奈が自分を怒りをぶつける少し前に時は戻る。
 事件はすでに起きていた。
 カフェスキャンダルの入り口前にショーウィンドウの蝋細工料理を見つめながら、食事を取る女がいた。
 その女の肩には彼女の頭よりも一回り大きい鴉が一羽止まっていた。
「よか、た……ね。鴉、くん? ミミつ――きだよ。ぜいた、く」
 表情は普段と変わらないが、どこか声に弾みがある。
 鴉くんはそんな愛しい主人を涙をこらえて見つめていた。
『ああ、俺にもうすこし魔力があればあなた様をこのよう目に合わせないというのに……』
 そう話していても、口から出る言葉は「カァー」という人ではない声、仕えて200年。
 思いは伝わらない。
 だが、鴉はそれでも胸の奥の熱い想いをとめることはできない。
 若き執事の想いは今燃え上がる。
『俺は……いや、俺があなたのことを……』
「エイプリルFOOOL!」
『一生どん底に落としてやるぜぇっ!!』』
「鴉、く、ん? 今、すご……く へん、な――こと、いわなか……た」
 西村はロケーションエリアを使ってはいない。
 それなのに、鴉には「おしまいにしますか?つづけますか?」と言う声が頭を支配していた。
「カ、カァ〜」
 鴉は情けない返事を返す。
 そして、自分の声を塞いだ声の主を見つけた。
 無駄のない筋肉質のボディを桜色のラメスーツで包む変た(以下略)。
「セイ!セイ!セイ! 朝から、見せ付けてくれますね〜、だけどそんな告白はやめなさぁい」
 見た目とは裏腹に渋い声で、指差し注意。
 その桜色のラメ男は腰を振りつつよってくる。
 しかも、早い。
 100m近い距離を5秒で縮めた。
 あまりの奇怪な行動に、西村も鴉も食べていたパンをポロリと落とす。
「! あな……た? 誰」
 拾い上げ、砂をぱっぱっと払いじーっとパンを見た後、ラメ男に向き合い西村は聞いた。
「私の名前は……」
「見つけたぞ、エイプリル・ガイ!」
 ラメ男――エイプリル・ガイ――が答える前に、梛織がエイプリル・ガイへ
 走りこむ、アスファルトを右足でふみ、体重をかけて押しのける。
 飛び上がった勢いを残したまま、左足を振って回転。
 ローリングソバットをかました。
 それをエイプリル・ガイは絶妙な腰の動きを使ったステップでかわす。。
 くねくねと動く姿は海の海草のように優雅だ。
「ちぃ!」
「君、君、ヒーローの名前を邪魔するというのはいけないですねぇ、恥を知りなさい恥を」
「そんな格好をしているあんたにいわれたくないわっ!」
「む、次の恋愛オーラが私を呼んでいる。では、諸君。また会おう」
 びしっと指をさしてツッコム梛織を真っ向から無視してエイプリル・ガイは尻を叩いたあと去っていった。
 
 
 〜それぞれの思い〜
 
 利奈が仕事に戻るのを見つめながら、相談されたジョニーは再び記事に目を移した。
「改めて見ても、素敵なファッションじゃない」
 はふぅとつややかなため息をするジョニー
「俺はあんたのそのセンスが理解できないぜ」
 相席に神宮寺 剛政はジョニーの左隣に座りながらボソッと突っ込んだ。
「Mr神宮寺は男の子だものね、オトメの気持ちはわからないのもとうぜンっ♪」
 予想できないリアクションに剛政口をあけたまま少し固まった。
「視覚への暴力だとわたくしは思いますけれど……」
 ジョニーの向かいに座りつつ、ファーマ・シストはつぶやいた。
「この刺激がいいのよぉン。アナタもオトナになればわかるわよぉ」
「できることなら、その日が来ないことを祈りたいものですわね」
「つれないわねぇ」
 ノリの悪い二人にジョニーは腰をくねらせて残念がった。
「でも、その様子ならアナタたちもこのエイプリル・ガイ、AGを止めようって口?」
「まぁ、そうだな」
(こいつの変な能力があればベルファルドに一泡ふかせれそうだからなぁ……ま、すぐに見破られそうだが)
 剛政はジョニーに答えつつ、ぼぅっと主人に対するちょっとした仕返しに思考をめぐらす。
 だが、何度考えてもその後痛い目に自分が合わされる結果にしかならなかった。
「ええ、興味はありますわ」
「んふふ、囮作戦とか考えちゃってるから協力しない?」
 ジョニーが身を乗り出して二人に聞く。2m3cmの巨漢が近づくと相当迫力があった。
「あれ、そこにいるのはジョニーさん?」
「んぅん? ああ、ナオミちゃーん♪ それに西村ちゃん?」
 ジョニーは声が聞こえてきたほうを向く。
 そこには、見知った二人が一緒にカフェスキャンダルへ来ていた。
「梛織です、ナ!オ!」
「ジョ、二……、ひさしぶ――り?」
「テーブル空いてるからこっちにきなさいよぉん、おねーさんとお話しましょ♪」
 隣の空いているテーブルを力まかせに引き寄せて、広いテーブルへとするジョニー。
「また、変わったメンバーで何の話です?」
「これよ、これ」
 ジョニーの右隣に座りつつ梛織はたずねた。
 答えは雑誌のAGの写真を指差して返された。
「この……ひ、と。ゆ――め……い?」
 西村は今朝の砂まみれのパンのミミを思い出しながら写真をじっと覗く。
「ジョニーさんもですか」
「ええ、利奈ちゃんが彼が原因で振られちゃったんですってぇ〜」
「「なにぃ!? 相手は誰だよっ!」」
 梛織と剛政の声がかぶり、両サイドから突っ込みをジョニーに入れていた。
「さぁ、そこまではアタシはきいてないわよぉン。興味あるなら直接聞いてみたらン?」
「べ、べつに俺はそこまで……」
「俺もそこまでするつもりはないぜ」
 にやっと笑うピエロの微笑みに怖気づいたか、二人はおとなしく下がった。
「梛織チャンと西村チャンも追っているの?」
「ああ、友人から頼まれてて……さっき追いめたとこだったんだが逃がして」
「そ、のと……き。あっ――た、ぐ……ぜん?」
「なるほどねぇン、それじゃあ確率もあるし。Mr神宮寺とMsシスト。梛織チャンと西村チャンで囮作戦ってのはどう?」
「何で、俺が……」
 剛政が不満を言おうとしたとき、ピエロがアップで近づく。
「あらん、アタシが相手のほうがよかったァン?」
「それだけはやめてくれ!」
「もう、ウブねぇ」
 ふふと少し頬を染め出すジョニー。
「「それは違うっ!」」
 再び、梛織と剛政の突込みが炸裂する。。
 本当に大丈夫なのか? と、残された西村とファーマはそう思っていた。
 
 
 〜嫌よ嫌よも好きのうち〜
「なんか、今日の西村は見違えるな」
 梛織はスキャンダルから公園にあるきつつ、一緒に歩く西村に顔を向けてそういった。
 告白イベントを行うにあたって、ジョニーが西村とファーマに対してメイクをしていたのだ。
 無論衣装もジョニーがレンタルして来た衣装で、童話などから出てきたかのように西村は可愛らしい。
『どこの馬の骨かもわからん奴に主人は渡さんっ!』
 ありったけの敵意を込めて鴉くんが梛織をつつきだす。
「いて、いててっ、何だよ、このカラスッ」
「鴉く、ん? つつ……く。の だ――め。お仕、事」
 西村は鴉くんなだめる。
 そうしていると、公園に着く。
 ジョニーが先回りして罠を張っているのだ。
 それに公園のほうが告白らしいというジョニーの一押しもある。
 公園の中央にある、時計台へ二人はついた。
「西村、俺……言いたいことがあるんだ」
 こほんと咳払いをして梛織は西村と向き合う。
「う……ん」
 すっと無表情ながらも西村は梛織を見上げる。
 その姿に梛織は胸が高鳴る。
(これは緊張だ、とにかく上手く演技しないとな……)
「あんまり、付き合いはないけど……俺、西村のこと」
「エイプリルFOOOL!」
「嫌いだ……くそ、来ないか!」
 梛織が告白するとき、忘れられなくなるような甲高い声が聞こえてきた。
 そちらを振り向けば、そこには桜色のラメスーツ。AGがそこにいた。
 ヨガをしているのか、たって両足の間から頭を除かせている。
「セイセイセイ! 公園で告白なんて、王道すぎますねぇ いけませんよぉ」
 その姿のまま、かさささと高速で梛織たちへ詰め寄ってくるAG。
「いけないのは、告白でなくて貴方の服のセンスでなくて?」
「そういうことだ、邪魔されたっていう被害者も多いんだ! とめさせてもらうぜ」
 AGの叫び声(?)をききつけ、ファーマと剛政も集う。
「多勢に無勢とは、貴方たちはもしや悪人ですかっ!」
 梛織たちに囲まれた形になるAG。
「愛の告白を邪魔する貴方こそ、悪ではなくて?」
 ファーマは薬の調合をしつつ、目の前の男に冷ややかな視線と好奇心からくる疑問をぶつけていた。
「そ、う……あな、たは――なぜ、す? るの……」
「その答えは簡単です、告白は男同士でするものだからさ! フォォゥッ!!」
 びしぃっと上半身をひねり、両手を高らかに挙げたポーズを決めて叫ぶAG。
 彼は同性愛主義者だった。
「ソッチけいかよっ! ああ、また妙なのにかかわっちまったなぁ……」
 剛政は突っ込みをいれつつ、頭をかく。
「はっはっはっ、心配は無用。貴方のようなゴリゴリな男子は好みですよぉ」
 ボディビルダーがするようなポーズをとってAGは剛政に誘いをかけた。
「断る、お前のようなやつは俺の拳で公正させてやるぜ! 覚悟しろっ!」
 
 
〜四月の馬鹿、愛のために散る〜
 
 夏の公園にさわやかな風が吹く。
 そこには桜色のラメスーツの男とそれを囲む4人の男女。
「しかたありませんねぇ、暴力は嫌いですが私の愛を受け取ってもらいますよぉ、ばっちこーい!」
「いろんな鳴き声をしていますね、サルにする薬がありますけど、これで変えてしまいましょうか」
「あれは鳴き声じゃないっ! それに、殴るやつがいるから妙なくすりはやめろっ!」
 ファーマの用意した薬を梛織はとめ、そのまま殴りかかった。
 きゅきゅとラメスーツを鳴らして、梛織の攻撃をかわす。
 そして、神宮寺へふわぁと両手を広げて飛ぶ。
「少年、君は後5年くらいした私の相手をしてあげましょう、筋肉がつけば早いかもしれませんがね!」
「俺にその気はないっ! 変質者がっ!」
「俺もお前見たいなのはお断りだっ!」
 神宮寺は飛び掛ってくるAGを迎撃するために、地面を拳で叩いて飛び上がる。
 AGはその行動に驚く、神宮寺の勢いは止まらない。
 空中でAGに拳を一撃、二撃と叩き込む。
「人間離れしているのは、お前だけじゃないっ! くらえっ!」
 ひるんだAGの背中へ上段踵落としを叩き込んだ。
 受身をとり、地面への直撃を回避するが、足元がおぼつかないAG。
「強いですねぇ、でもさすがにここは戦略的撤退をいたしましょう」
 茂みの奥へ去ろうとしたAGを突如巨大な影が包む。
「あらン、そうはいかないわよ♪ MrAG」
「ナイス! ジョニーさん」
 ぐっと、ピエロが羽交い絞めをしAGの動きを止める。
「これで、終わりだお前の星へ帰れっ! うらぁぁっ!」
 神宮寺の周りに強力な力があつまりだす。
 それを右拳へとまとめ、AGに向かってパンチと共に放つ。
 ジョニーの拘束がそのときとかれ、AGは星へとなった。
「もう、更正させようと思ったのにンっ」
 星になったAGを見上げて、ジョニーはつんと口を尖らせる。
「ああいうのは、星になっても治らないさ」
 神宮寺もジョニーの隣に立ち見上げる。
 真っ青な空。
 そこに浮かぶ入道雲が、どこかAGの姿に見えた。
 


クリエイターコメント遅くなりました〜

こんな突っ込みどころ満載なシナリオに参加していただき感謝いたします。

ジョニーさんにいたっては、これが初シナリオでしたが、満足していただけたでしょうか?

皆さん個性豊かなキャラクターで動かしていて楽しかったです。
まだまだ表現力に乏しい部分はありますが、応援していただけたら幸いです。

ご意見ご感想など、ファンレターでお待ちしていますので、よろしければどうぞ。

それでは、また運命が交わるときまでごきげんよう。
公開日時2007-05-23(水) 23:30
感想メールはこちらから